JAXA 相模原キャンパスの一般公開に行ってきました。
今年は午前中腰痛治療で病院に行っていたため、午後からしか行けず、時間が全然足りませんでした。6 つある会場のうち、第 5 会場しか見れませんでした…
スクーターで行ったので、西門から入り、西門内側の駐輪場にスクーターを停めました。公共交通機関だと、私の家からだと小田急相模原→(小田急)→町田→(JR 横浜線)→淵野辺→(バス)→JAXA 相模原、とすごく大回りになってしまうため、ものすごく時間がかかってしまいます。また、車で行くと駐車場が満車で入れないことなどもあるので、JAXA 相模原キャンパスの一般公開へは、スクーターや自転車で行くのが一番よいような気がします。
西門を入ってすぐのところに会場マップやスケジュールを書いた案内看板がありました。
いつも西門から入った時でも、正門方向へ進んで第 1 会場から見ていたのですが、今回は第 5 会場から見てみることにしました。
最初に気になったのは再使用観測ロケットです。展示されているこの写真のロケットエンジンは、試験機ですが、燃焼試験を実際に行ったモデルです。しかも元々はフライトモデルとはならないはずだったのに、全体のスケジュールが伸びたことで、このエンジンそのものが、最初のフライト試験に用いられることになったそうです。
エンジン本体はなんと銅で出来ているそうです。耐熱温度が低いので、エンジン自体に水素を通す配管が多数通っていて、燃料の水素の一部をそこに通すことで冷却しているそうです。逆にそこで加熱された水素は、その力を利用して、ターボのタービンを回す動力源となっています。すごい絶妙なバランスで出来ているエンジンという感じでした。
観測用ロケットなので、宇宙まで飛んでいくものではなく、大気の高層まで飛んで、観測を終えると戻ってくるというものです。着陸場所ですが、離陸場所の近くに、学校の運動場のような広さの土地があれば十分戻ってこれ、精度は 10m 以内というような単位で余裕で制御できるそうです。パラシュートではなく、逆噴射して軟着陸します。
推力の大きさの調整は、燃料である水素の流量を調整するバルブがあるそうです。
燃調は、そもそも必要なのかどうかもわかりませんでしたが、ちゃんと調整機構があるそうです。O2 センサーがあるんですか? と聞いてみたら、そんなものはなく、水素と酸素の流量計の差で調整しているとのことでした。
燃料はどこで気化するんですか? と聞いてみたら、そもそも Mega バールの圧力が燃料にも酸素にもかかっているので、状態として「液体」とか「気体」というような圧力ではないらしいです。知らなかった。ターボと言われると、車のターボのような 1.5 倍とか 2 倍とかいうような圧力だと思っていたのですが、全然違う世界なのでした。
燃料タンク、酸素タンクからどんどん燃料や酸素を消費していくと、最後には燃料や酸素が出てこなくなりませんか? と聞いてみたところ、燃料タンクや酸素タンクには、燃料の一部を気化したものを戻して圧力を保っているのだそうです。
推力方向の調整は、エンジン自体を支えるジンバルで行うそうです。ジンバルのアクチュエーターがロケットエンジンの巨大な推力に耐えてその向きを変えたり、向いた方向を保ったりできるのが不思議だったので質問してみましたが、担当していた方がエンジン本体の担当者だったため、わからないということでした。勉強しておくので来年同じ質問をしに来てください、と言われました。
続いて、ちょうどイプシロンロケットプロジェクトマネージャー森田 泰弘さんの講演が始まるところだったので、聴いてみました。椅子は埋まっていて、20 ~ 30 人ぐらいが立ち見していました。私も開始ぎりぎりぐらいに偶然ここへ来ただけなので、当然立ち見です。
あまりハードな内容ではなくて、「固体燃料ロケット大好き」という感じの、ちょっとほんわかした講演でした。面白かったのですが、今回は午後に来ていて時間がなかったので、講演聴くより、色々な展示を見てまわった方が良かったかも… とも思ってしまいました。
次に気になったのはスロットアレイアンテナです。
普通はアレイアンテナというと、それぞれのアンテナ素子に、何らかのデバイスがついていて、そのデバイスが細かくタイミングを調整して電波を出すことで、全体の合成された電波が一定のビームを作る、というようなものですが、このアレイアンテナは、幾何学的に計算されたスリットの位置だけで、そのようなアレイアンテナの機能を果たしてしまおうというものです。用途はレーダーなので、周波数は 1 つの周波数だけにチューニングしてしまえばよく、そんなことが可能なようです。この写真の枠外の板状に見えるアンテナの左端に導波管があり、その導波管に、精密に計算された穴が開けられていて、そこから漏洩した電波が、右方向に進みます。その電波が、この写真に見える T 字形に組み合わされたスリットから漏洩するのですが、位置が絶妙に計算されているため、その漏れ出た電波がうまく円偏波となって、この板状のアンテナに対して垂直方向に出て行くのだそうです。説明聞いても「ほんとかよ…」と思ってしまうような技術です。
もっとびっくりしたのは、当たり前と言えば当たり前なのですが、このアンテナはレーダー用なので、送信した電波が何かに当たって戻ってきた電波の受信にも使います。戻ってきた電波は上記の説明の逆に、スリットから入り込んで、合成されて導波管に開いた穴に入って行き、導波管根元の受信素子に着信するんだそうです。そりゃ、送信できるんだから、受信もできるんだろうと思いますが、どうも納得できません。
あとはおなじみ太陽発電衛星です。
以前質問した時には、その場に立っていて私が質問をした説明員の人が実は担当者ではなくて、ほとんど答えを得られませんでしたが、今回は色々答えてくれました。
まず、焼き鳥問題ですが、電磁波の密度がすごく低いため、受電アンテナ上空を飛ぶ鳥が焼き鳥になることはないそうです。
衛星の位置ですが、静止軌道になるそうです。遠くないですか? と聞いてみましたが、距離的には問題ないとのことです。
衛星の大きさですが、発電パネルは 2km 四方程度だそうです。静止軌道のスロットに収まるのは間違いないのですが、例えば現在の原子力発電 (が 2010 年までのように本来の稼動状況だった場合) の発電量を置き換えるには、この 2km 四方の発電パネルが 40 ~ 50 個ぐらい必要なのだそうです。日本だけで。日本から見える静止軌道に、40 ~ 50 個もスロットをもらうことはできるはずがないので、どうするんですか? と聞いてみましたが、「政治的な問題になるので、答えはない」ということでした。1 つの衛星位置に、2km 四方の発電パネルを連結して、衛星をどんどん大きくする、という方法も検討はしているそうです。
2km 四方の衛星を打ち上げられる輸送手段はないという質問には、もちろん細かく打ち上げて上空で組み立てるという話でした。自動的に組み立てる技術は? と聞いてみましたが、大丈夫なはず、ということでした。しかし国際宇宙ステーション ISS の組み立て時には、実際には宇宙飛行士がハンマーをふって押し込む、というようなローテクの極みのような方法で組み立てられた箇所も多数あるので、無人で 2km 四方などという巨大な衛星を組みたてられるのかは、正直疑問です。
これだけ大きいと故障の確率も高まりますが、細かなモジュールに分かれていて、故障した場合は、モジュールごとに機能を停止させるそうです。それによる出力低下は、可能ならば追加のモジュールを打ち上げて、自動的に連結させて復旧させるということでした。
衛星自体の制御は、もちろん何らかの燃料を積んで、ロケットエンジンで調整するようです。2km 四方ともなると質量が大きいので、燃料も大量に積んでおかないと、すぐに制御不能になりそうですが、そのことは今の時点ではあまり考えていないそうです。
検証は、地上での電力送受信試験はもうできているそうです。宇宙からについては、国際宇宙ステーション ISS に送信機を置いて試験をしてみようと考えているそうです。90 分で地球を 1 周する国際宇宙ステーションからだと、きちんと電力の送信方向を細かく制御したりしないと行けませんが、大丈夫ですか? と聞いてみたところ、そこはけっこう技術的に確立しているような話でした。
意図的に電力の密度を下げて送信しているけど、一箇所に集中させれば、兵器になり得る装置ですよね? という話については、その通りなので、そうなってしまわない方策を考えなければならない可能性はあるそうです。(逆に言うと、まだ考えていないらしいです)
静止軌道だとすると、地上局は赤道付近に置く必要があるのですか? と聞いてみましたが、日本ぐらいの緯度でも大丈夫だそうです。
夢のあるプロジェクトだとは思いますが、課題が多すぎるとも感じました。
ここで早くも終了時間になってしまいました。
キャンパス内をすこし歩いて、多くの人が「M-V ロケットの実物大模型」だと思っている M-V ロケット 2 号機の実物のところまで行ってみました。
すると以前はたぶん林になっていたはずの、M-V-2 の後ろ側が整地されていました。整地された周囲には工事囲いがあり、宇宙探査実験棟 (平成 29 年 春 完成予定) の看板が設置されていました。新しい建物が建つようです。
ロケットが展示されている付近では、帰宅しようとする人の流れの中に、高下駄、うさ耳、後頭部に白仮面、という謎の人物がいて、今日も平和だなぁ、と思いました。
そんな感じで、毎年時間が足りず欲求不満となるイベントですが、今年はいつもよりさらに欲求不満な感じで終わってしまったのでした。