年に 1 度公開される NHK 放送技術研究所の一般公開を妻と見に行ってきました。
小田急で成城学園前駅へ向かいます。
成城学園前駅の駅ビルにはジロ・デ・イタリア Giro d’Italia という店があり、ロードレーサーが飾ってありました。別に自転車屋さんではありませんが、ジロ・デ・イタリアという店名なら、やはり自転車を飾らざるを得ないでしょう。
ジロ・デ・イタリアに飾られた自転車
駅前には高級スーパー成城石井の発祥の店である成城店があります。
成城石井成城店
電線の地中化もされていないし、個々の建物はそれほど都会らしさを感じるようなスタイルではないし、町並みの小さな点を見ていると、おださがと違う点はあまりないのですが、なぜか町並み全体を見ると、なんとなく高級な感じが漂う不思議な街です。
NHK 放送技術研究所へ向かう前に、まずは昼食です。場所は、成城学園前へ行くという事で妻が事前に調べておいてくれた Kiriy’s Fresh (キリーズフレッシュ) というパン屋さん兼喫茶店のような店です。キリーズバーガーと飲み物のセットと、コーンポタージュスープを頼み、飲み物は紅茶を選びました。
キリーズバーガー
ハンバーガーでは、いわゆるバンズと呼ばれるハンバーガー用のパンを使うのですが、ここのハンバーガーは、もう少し一般的な感じのパンが使われています。具材となるハンバーグも、ハンバーガーでよく使われるミートパティと呼ばれるものと違い、そのままお皿に盛ってソースをかけてもらえれば単品の料理となるような感じのハンバーグでした。
食事を終えて、成城学園前南口から NHK 放送技術研究所直通のバスで移動し、見学開始です。展示はたくさんあるので、気になったものだけを紹介します。
まず最初の方にあった「ユーザーの意図を汲み取るテレビ」です。テレビの前に人が座ると、その人が誰かを認識して、その人の好みに応じた番組を提案したり、テレビに向かって「この人誰?」とつぶやくと、「坂本竜馬です」と教えてくれたり、テレビの前に座った人がいなくなるとテレビを自動的に停めたり、雑誌を読み終えると、その時読んでいた雑誌の内容に関連する番組を提案したり、といったことをやってくれます。なにかテレビの機械に監視されていてリラックスしてテレビを見れなくなってしまうような気もしますが、面白い研究です。
下の写真はテレビが「判断」している状況をリアルタイムで表示するモニターで、テレビを見る人の役をしている人の動きや表情の変化、机に置かれた雑誌などの情報、さらに上記のような質問に答えるのに必要なコンテンツ側に設定されている情報の状況などを、横スクロールしながら表示しています。
ユーザーの意図を汲み取るテレビの動作状況モニター
こちらはおそらく今回の最大の目玉であるスーパーハイビジョンカメラ Super Hi-Vison Camera です。
スーパーハイビジョンカメラ Super Hi-Vison Camera
カメラが出す情報量が多すぎて、現在まともな録画機器がないそうです。現在存在するリアルタイムに録画可能な録画機器はメモリだけで、数十秒程度しか録画できないそうです。それをハードディスクに移動しては、また撮影、ということを繰り返すのだそうです。ちょっと間抜けな感じです。それほどカメラが凄いということでもあるのですが。
解像度が非常に高いため、画面の一部を切り出しても通常のハイビジョンレベルの画像が取り出せるということを利用して、スポーツ中継などでは、スーパーハイビジョンカメラで広めに撮影しておいて、その一部を切り出すと、動きの激しいスポーツで、カメラのパンが追いつかずに重要なシーンを撮り逃すことがない、というような使い方はすでにしているそうです。
こちらは打って変わって放送博物館コーナーの古い機材です。
最初はアイコノスコープという極初期の撮像管を使ったカメラです。なんと戦前、1939 (昭和 14) 年のカメラです。
アイコノスコープカメラ
こちらは 1956 (昭和 31) 年のイメージオルシコンという撮像管を使った TKO-3 型というカメラです。性能のよいズームレンズがまだ開発されていなかったため、焦点距離の違う複数のレンズを、回転する装置にあらかじめ取り付けておき、必要に応じてレンズ自体を切り替えることで現代のカメラのズームのような役割を果たします。私が子供の頃には、まだこのような回転するレンズ台がついていたカメラが使われているのをテレビで見ていた記憶があります。
TKO-3 型イメージオルシコンカメラ
説明員の人が、レンズを切り替える操作をデモしてくれました。
TKO-3 型カメラレンズ切替操作
次に紹介するのは点字字幕装置です。目の見えない人がそもそもテレビを買おうと思う事自体があるのかどうかがよくわかりませんでしたが、データ放送番組の内容の字幕内容を、点字に翻訳して読めるというものです。
データ放送点字字幕装置
これは電波カメラです。目の前にベニヤ板が立ててありますが、その向こうに置かれたマネキンを撮影しています。
電波カメラ
電波を照射して反射を拾って画像にしているので、ベニヤ板のような電波を通す素材なら、その向こう側が撮影できます。そして、撮影した画像がこちらです。
電波カメラ撮影画像
色は撮影できないので画面は白黒です。私は撮影した対象のマネキンを目の前で見ているので、あぁ、これはマネキンが写ってるな、とわかるのですが、事前にマネキンを撮影したものという説明なしにこの動画を見ると、マネキンだと判断するのは無理、という程度の画質でした。面白い装置だと思うので、今後も研究を続けて欲しいものです。
次は、3 次元物体の触力覚提示技術という展示で、触感を伝える装置の展示です。ロボットアームのようなものがあって、その先端は説明員の右手には 3 本の指と手のひらに固定されています。手を動かすと、画面に映っているリンゴの形でロボットアームが抵抗するため、そこにリンゴがあるかのような触覚を感じるのだそうです。
撮影は光学センサーで対象物をスキャンして行うのだそうですが、表面の硬さの情報とか、表面の素材感などはパラメーターで調整するしかないのだそうです。まだまだ先の技術だと感じましたが、未来を感じる展示でもありました。
触感を伝える装置
次は今回の展示の中で最も興味を引かれたもので、「スピン注入型光変調素子 Light Modulation Device Driven by Spin Transfer Switching」という展示です。デバイスがレーザー光を反射する時に変調をかけることで、デバイスの上の空間に浮かび上がる立体像を作れるというものです。
メガネをかけて視差を利用して「立体のように見える」という子供だましの 3D テレビが最近話題になっていますが、あんなものとはレベルが全然違います。SF 映画やアニメで出てくるような、本物の立体画像を表示するテレビを作ろうという研究です。
スピン注入型光変調素子展示看板 Light Modulation Device Driven by Spin Transfer Switching display sign
そしてこちらが実際のデバイスです。
スピン注入型光変調素子 Light Modulation Device Driven by Spin Transfer Switching
この素子は 24 x 24 の解像度しかなく、表示できる立体画像は「点が作れればいい」というぐらいで、まだまだ基礎研究の段階です。
立体画像の表示には光の干渉を利用するので、レーザーを使うことになります。安全性について聞いて見ましたが、一次光を見るわけではないので問題ないだろうということでした。
撮影については、意外なことに、3D 撮影用のプリズムを付けたカメラで撮影した画像から、ホログラム用情報を作ることができるそうで、そうやってホログラム情報に変換されたデータが既にあるのだそうです。普通のカメラで撮ると、立体の一方の面しか見えないのでそちら側しか撮影できず、この装置で表示できるような本当の立体画像だと、後ろに回ると表示されていない部分があるというような不完全な立体画像になってしまいそうに思います。
カラー化については、3 原色それぞれのレーザー (3 原色全波長とも、安価に使えるレーザーがあるんでしたっけ?) と、このデバイスを使えばできるはずと言っていましたが、干渉の発生の仕方などが波長による違いがあるので簡単ではないかも知れないとも言っていました。
最後に、いつ頃できるのですか? と聞くと「私が生きている間には実用化したい」ということだったので、私も生きているうちに見れるのかどうか、というようなレベルの壮大かつ遠大な計画です。
研究とは違う展示もありました。
これは 2010/06/05(土) に放送される「印象派名画大集合」という番組で、日比野克彦さんが、視聴者などから寄せられた絵や写真を組み合わせて作る作品で使われる絵を募集する看板です。
2010/06/05(土) 印象派名画大集合という番組の企画説明看板
グライダーの絵を描いて出してきました。
奥村の描いたグライダーの絵
NHK 放送技術研究所のキャラクターラボ Labo ちゃんと記念写真を撮るコーナーがあったので撮ってもらいました。
ラボ Labo ちゃんとの記念写真に収まる奥村と妻
見学を終えて、帰りも直行バスで成城学園前駅まで戻って、そこから小田急で帰宅しました。
成城学園前の駅は、複々線化・立体化工事の前の、まだ地上駅だった 1996 年に来て以来です。大きな吹き抜けがあって、いい感じの駅舎でした。4F に屋上庭園というスペースがあり、見に行ってみると、屋上庭園の一番端の部分からは、小田急の複々線区間が見渡せました。こういう角度から見るのは初めてで新鮮な印象を受けました。写真を撮ってみようと待っていると、小田急ロマンスカー 30000 形 EXE がやってきました。
小田急複々線区間を小田原方面へ向けて走るロマンスカー 30000 形 EXE
小田急複々線区間を小田原方面へ向けて走るロマンスカー 30000 形 EXE (動画)
日々の生活には全く役に立たないのですが、最先端の研究成果に触れることができる楽しい 1 日でした。
NHK 放送技術研究所が一般公開していることも知りませんでしたし、こんなに魅力的なところだったとは!年に一度を良く見逃しませんでしたね。来年は子供を連れて行ってみます。キリーはたまに行きます。私が好きなのはゴルゴンゾーラチーズバーガー。さすが!電車を見るのに良いスポット知ってますね。うちの子の大好きなスポットです。VSEが来たときは大きな声で呼んでくれます・・・
> 京増さん
NHK 技研公開は毎年やっています。興味深い展示も多いのですが、他の予定と重なったりすることもあってあまり見にいけていません。最近はハイビジョン関連の展示が多いのですが、ハイビジョンとスーパーハイビジョンの違いは、どちらも綺麗すぎてあんまりわかりませんね…
あと、インターネットとの連携に関する展示がたくさんありましたが「これってニコニコ動画?」というような感じで、いまさらテレビでこれをやる必要があるのかなぁ… という感じです。
ロケーションフリーとかフェアユースに関する展示が全然ないのですが、研究してないんですかね? (してないはずはないと思うのですが…)
成城学園前駅屋上のスポットは、今回偶然見つけました。いいところですね。